アレルギーについて

花粉症のようなアレルギーが人でとても多いように、わんちゃんや猫ちゃんも非常に多い疾患です。一般的なアレルゲンは、花粉、フケ、草、木、織物等ですが、空気中に存在する微粒子は全てアレルゲンになります。
人のアレルギーは呼吸器症状が多いのですが、わんちゃんや猫ちゃんでは皮膚に最も多く現れます。

 

アトピー性皮膚炎の特徴

 

・症状は初期は季節的に現れますが、数年経つと痒みの症状が次第に長期になり、多くの場合最終的に1年中痒みが続くようになります。
・アトピーの季節的な痒みは若齢時(1-3歳頃)から始まります。
・アトピーによる皮膚症状は、図のような特定の部位に認められます。
・アトピーによる痒みは、副腎皮質ホルモン製剤が非常に良く効きます。

 

猫ちゃんのアトピー

猫ちゃんの場合は顔面部(耳の前)および背中やお腹の毛をしつこく舐めて薄くなることが特徴となります。頭部の病変が強い場合は食物アレルギーの併発を疑います。

 

検査

一般皮膚検査

アレルギー専門外来では、アレルギー治療の前にアレルギー以外の皮膚病がないか診断を行ってからアレルギーの診断、治療を行います。そのため、アレルギー性皮膚炎の検査にすぐ入るのではなく、感染のチェックなど皮膚科の基本的な検査を行います。

 

除去食試験(食物)

アトピーと食物アレルギーは非常に類似した皮膚症状、痒みを示します。「除去食」とは、完全にアレルギー反応を起こさない食事を1-2ヶ月間投与し(最低1ヶ月)、アレルギー症状が改善するかどうかを判定する方法です。検査用のご飯を1ヶ月間食べて今まで存在したかゆみ、赤みなどの症状が治まった場合その子は「食物アレルギー」だったという事が分かります。

 

血液検査によるアレルギー検査(IgE検査、リンパ球刺激検査)

アレルギー性皮膚炎は身の回りの目に見えない花粉やハウスダスト、食べ物の中の成分が原因となって起こるアレルギー反応です。したがって治療で一番大切なことは原因物質をみつけ、それを排除することです。

 

そのための方法として抗原特異的 IgE検査があります。この検査により、原因となりえるものを特定できます。検出された多数の原因物質の中で、とくに食物中のある成分がアレルギー性皮膚炎の主な原因であった場合には、その成分を含まないフードに代えることによって症状を抑えることができます。食べ物以外の物、すなわち環境中の物質が主な原因であったなら、それを身の回りから排除できなければ症状を抑えることはできません。

 

また、本試験は減感作療法を行う際に体質改善を測る必要性のあるアレルゲンを把握し、減感作薬を作成するために実施されます。

 

病理検査

皮膚炎が起きている皮膚を少しだけ切り取り(直径6mm)、病理検査センターに送ることで皮膚に何が起きているかを調べる検査です。実際に皮膚を切除するため、半日間のお預かりさせて頂き、鎮静処置の上で局所麻酔を行って出来る限り痛みを感じないように皮膚を取らせていただきます。検査後は縫合を行い、10日以降で抜糸が出来ます。

 

治療

副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)

プレドニゾロンは痒みを伴う皮膚炎の治療の「第一線」の最も有効な薬です。

 

≪プレドニゾロン投与中の注意事項≫

動物の痒みがひどく、プレドニゾロンの用量を増加させなくてはならない場合があります。しかし、プレドニゾロンはホルモン製剤ですので、皮膚だけでなく全身に作用を示し、次のような副作用に注意しなければなりません。

異常にのどが渇く/尿失禁(尿を漏らす)/免疫抑制/膵炎の危険性/食欲が異常に増進する/筋肉が虚弱化する/流産の可能性/気力・あえぎ症状

副作用があり、その許容範囲を超えるようなら、プレドニゾロンの用量を減らしたり、別の治療法を考慮しなければなりません。

 

免疫抑制剤

プレドニゾロンの代替薬としては免疫抑制剤の一つであるシクロスポリンが用いられます。シクロスポリンはプレドニゾロンの服用が長期化する難治性アトピーの症例で用いられ、60〜75%のアトピーの犬で痒みを抑制する助けになります。

 

抗ヒスタミン剤

この薬はほとんど副作用がありませんが、10-20%のワンちゃんにしか良好な反応は認められません。抗ヒスタミン単独で反応の悪い動物でも、プレドニゾロンと併用することで、プレドニゾロンの用量を減らすことが出来ます。猫ちゃんの場合、抗ヒスタミン剤は、わんちゃんに比べかなり効果が高く、良好な痒みのコントロールが出来ますが、猫ちゃんに1日2回以上内服することが結構大変であることが問題となります。

 

脂肪酸製剤

脂肪酸は皮膚内の炎症性の化学物質産生を阻害するような薬理作用を持つ脂肪です。この製剤は、しばしば抗ヒスタミンと併用して投与することで効果を高めます。

 

外用剤

ローション剤、シャンプー剤、軟膏剤なども痒みのコントロール補助剤として有効です

 

シャンプー

アレルギー性皮膚炎のコントロールで最も大切な要素の一つです。常に皮膚を清浄に保ち、アレルギー性の皮膚炎を悪化させる要因である細菌やアレルゲンを物理的に落とし、皮膚の代謝を正常な状態に保つ作用があります。

 

減感作療法

アレルギー性皮膚炎の場合、当院では減感作療法をおこなっております。これは「アレルギーの自然治癒を促す唯一の治療法」としてWHO(世界保健機構)で認められています。これは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を体に少しずつ注射で投与していくことで、そのアレルゲンに対して体を慣れさせることでそのアレルギー反応を起こさせなくする方法です。

 

副作用はほとんどなく、効果は60-80%の動物で効果が認められるとの報告があります。また、ステロイドや他のアレルギー薬の中止または減量が期待できます。

 

デメリットとして、注射のための通院が必要であることが挙げられます。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

 

*2014年より注射以外に舌下免疫療法も実施可能となってますので頻繁な通院が困難な患者さんにも選択肢が広がっています。