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避妊・去勢について

避妊・去勢手術のすすめ

避妊・去勢手術をするかしないかは、多くの飼い主さんが一度は考え悩むテーマではないでしょうか。

 

自然に備わったものを手術するなんてかわいそう・・・と感じるのは当然のことです。
しかし、大切に育てられたわんちゃんや猫ちゃんは中高齢になると生殖器関連の病気に悩まされることが多いのも事実です。その時期にはほかに心臓病なども併発していることもあり、手術が困難であったりして危険性が高くなるのです。そのため若い時期での手術が推奨されているのです。

去勢手術とは"オスのわんちゃんネコちゃんの精巣をとること"で、
避妊手術とは"メスのわんちゃんネコちゃんの卵巣のみ、もしくは卵巣と子宮の両方をとること"です。

確かに放し飼いで動物を飼っていた時代、去勢・避妊手術をする一番の目的は「望まれない繁殖を防ぐこと」でした。しかし現在での大きな目的は、以下の 2つです。

  1. 発情期のフェロモンなどによる性的ストレスの軽減
  2. 年をとってからの病気の予防

以下に去勢・避妊手術に関するメリット・デメリットを挙げます。

 

《去勢について》

メリット ○攻撃性が緩和される可能性がある
○前立腺や肛門周囲腺腫などの病気の発生率が下がる
○マーキング、発情期の雌犬に対する過剰な反応などが無くなる
デメリット ●太りやすくなる
●どんな手術であっても麻酔リスクはゼロではない

 

《避妊について》

メリット ○望まれない子犬子猫の出産がなくなる
○乳腺腫瘍や生殖器などに関する病気の発生率が下がる
デメリット ●太りやすくなる
●どんな手術であっても麻酔リスクはゼロではない

 

去勢手術をしないことによって起こりうる病気で、なってしまうと非常に困る病気として肛門周囲腺腫・前立腺肥大・睾丸の腫瘍・会陰ヘルニアなどがあげられます。
また避妊手術をすることによって防げる病気はたくさんあります。そのうち避妊手術をしないことによって起こりうる病気で命を奪う可能性のある病気として乳腺腫瘍・子宮蓄膿症・卵巣腫瘍の3つがあります。これらの病気について詳しくご説明します。

 

《去勢手術によって防ぐことができる病気》

肛門周囲腺腫
肛門の周りを取り巻くように腫瘍が発生し、腫瘍が破裂して化膿したり、出血が止まらなくなったりします。

 

前立腺肥大
前立腺肥大は人間もよく起こる病気で、人間の主な症状は排尿困難です。
犬の前立腺肥大では人間と違い、尿道を圧迫することなく前立腺の上にあるうんちの通り道(結腸・直腸)を圧迫してしまい、排尿困難、頑固な下痢が見られることがあります。

 

睾丸の腫瘍
睾丸の腫瘍には良性の腫瘍と悪性の腫瘍(ガン)があります。ガンの場合には、リンパ節、肝臓などに転移して命を失ってしまう場合もありますし、良性であっても腫瘍から出るホルモン異常により、脱毛、皮膚炎、貧血、前立腺の異常などが見られるようになります。

 

会陰ヘルニア
肛門に近い腸の周りの筋肉が弱くなることで、本来筋肉の中に収まっているべき腸が周りの筋肉から外に出てしまうことです。それによって、排便困難や便秘などの症状が見られ、ひどくなると嘔吐などの症状も見られることがあります。

 

《避妊手術によって防ぐことができる病気》

乳腺腫瘍
10歳以上の犬の死亡原因を調べると、45%がガンで死んでいます。特に犬の腫瘍の中で最も多く見られる乳腺腫瘍は、メス犬で高率に発生することが知られています。避妊していない犬と避妊している犬を比較すると、避妊していない犬では7倍の確率で発生しています。明らかにホルモン依存性の腫瘍であることがわかっています。また、避妊の時期による発生率に関するデータでは、初回発情の前に避妊した犬では 0.024%、1回目の発情後に避妊手術した犬では 20%以上という報告があります。このことからも、早期に避妊手術をすることで、乳腺腫瘍が起こる確率を限りなくゼロ%に近づけることができることがわかります。

 

子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は、主に12歳以上の犬に起こる子宮に細菌が感染し、膿がたまる病気です。この病気は犬の性周期と関連し、女性ホルモンの異常によって子宮の免疫力が下がり、細菌が入り込みやすくなることによって起こります。

 

卵巣腫瘍、子宮腫瘍など
卵巣腫瘍、子宮の腫瘍は犬ではかなり希な病気です。しかしこれらの腫瘍は悪性であることが多く、ガンにかかってしまった場合には、お腹の中に転移を起こしたりお腹の中いっぱいに腫瘍が広がってしまうことがあります。

去勢手術・避妊手術をする時期
若い時期に行うと、皮下・腹腔内脂肪が少なく手術が安全に行える上、麻酔の覚醒も早く、動物の負担は少なくなります。そのため、若い時期での手術をおすすめします。生後6ヶ月から手術が可能です。